片道切符と夢の話

浪華の七星と日向の坂道

虚妄はてなブログ 第7話

今日めっちゃ眠い

 

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《いやー、まさか丈のビジネスパートナーが和也と舞佳やったとはなぁ…》
《……大きなったんやな、2人とも。》
《お兄ちゃん嬉しいで。》

忠義くんが1人でオジサンみたいなこと(まぁ本当に叔父さんではあるんだけど)を言っているのを後目に、私とかずくんは2人がかりでまだ混乱している丈くんに説明していた。
丈くんの言う「大倉さん」が私たちが言った「忠義くん」であること。
彼は私とかずくんのお母さんたちの年の離れた末の弟で、私とかずくんにとってはお兄ちゃんみたいな存在であること。
忠義くんは所属していたサークルのOBで、よく目をかけてもらっていた、と丈くんは言った。

数分後、事実をようやく咀嚼したらしい丈くんが、大きな瞳を見開いてこう言った。
〔考えてみればなんかすごいよな!!やって、俺の先輩が、大橋と舞佳に縁がある人やったんやで?〕
〔やっぱ俺ら繋がってたんやなぁ。お祝いしようや、大倉さんもいれて4人で!〕
「…ねぇかずくん、忠義くん。」
「前から思ってたんだけどさ、丈くんって、かわいいよね。」
『わかるわぁ。ピュアなんよね。』
《わかる。かわいがりたくなるよな》
〔男に向かってかわいいって何なん?!〕


丈くんはさっきの会話ではぷんすこ怒っていたけど今は忠義くんと向き合って打ち合わせ中。
私とかずくんは、キッチンで仕込み、という名の今日のメニュー作り。
さっき丈くんが言ったお祝いの件を忠義くんが二つ返事で了承したから、今日の夕飯はここで食べることになった。
お祝いのケーキは、甘いものが苦手な丈くんと忠義くんのためにチーズケーキ。
オーブンに入れたケーキの様子を見ていると、
かずくんが近づいてきて私に何かを渡してきた。
『舞佳ちゃん、これ。結衣さんが渡してったやつ。』
東京を離れる日、結衣がくれたプレゼントだ。
ラッピングを剥がし、箱を開けてみる。
「わぁ… かわいい…」
結衣が勤めている化粧品メーカーの、ハンドクリームとボディークリームのセットだった。
『これ有名なやつやんな、ええ匂いするって。』
「うん。匂いだけ嗅いでみる?」
容器の蓋を開け、かずくんに渡そうとした。
けど出来なかった。
彼が、私の手首ごと引っ張り、指先に顔を寄せてきたから。
『ほんとや、ええ匂いやなぁ。』
きっと今私の顔は真っ赤だ。
「そ、そうだね! 」
大胆な行動は、心臓に悪い。
まだ波打つ鼓動を抱えて、私はオーブンに向き合った。
取り繕っていたつもりだったけど、相当上の空だったのだろう。
チーズケーキの端が、少し焦げてしまっていたから。

 


かずくんの作ったご飯と、私の作ったチーズケーキ。
お酒(忠義くんは私たちが知る限りでは最強のザルだ)も入って、みんなずっと笑っていたような気がする。
私とかずくんは小さい頃の恥ずかしいエピソードを暴露され、丈くんはかずくんとの中学時代のテストについて論争してたっけ。
気づいたら、もう0時を回っていた。
お酒に弱い丈くんは、忠義くんに潰されて部屋の隅で呻いてる。
忠義くんとかずくんはまだ飲んでるけど、私も眠くなってきた。
丈くんの隣に座って、壁にもたれて眠ることにした。

 

《なあ和也、まだ好きなん?》
『忠義くんには、言うたらんし。』
《 …まぁええけど。お前らは、俺のかわいい妹と弟やから。》

《自分に嘘だけはつくなよ、和也。》

2人がこんな会話をしていたことも、潰れていはずの丈くんがこれを聴いていたことも。
私はまだ、知る由もなかった。

 

 

 

 

虚妄でもドラマでも三角関係が動き出した感ってめっちゃ楽しいよね